歯周病とは?意外に知られていない歯周病の原因や症状についてご紹介
(2019年11月21日に更新されました)
今はテレビでも「歯周病」という言葉が使われるようになったので、名前をご存じの方も多いと思います。
ですが、歯周病があなたにどの程度の被害を与える病気なのかご存じでしょうか?
歯周病は「なかなか治りにくい」病気であり、「治ってもすぐ復活してくる」病気でもある非常にやっかいな病気です。
まずはしっかりと歯周病を知っていただき、あなたの歯を守るためにどう歯周病と向き合えばよいのか、ご案内したいと思います。
歯周病とは
歯周病は、その名の通り「歯のまわりの組織の病気」のことで、虫歯(う蝕)と同じように口の中の細菌が原因でおこる病気です。
どこまで細菌が広がったかによって次の2段階があります。
歯肉炎(しにくえん)
口の中の細菌が増えてくると、歯と歯ぐき(歯肉)の境目部分から炎症が始まります。 歯ぐきが赤く腫れ、ちょっとした刺激で出血しやすくなります。
この状態を「歯肉炎」と言います。
歯肉炎の段階で治療すれば、元通りに回復します。
歯周炎(ししゅうえん)
しかし、歯肉炎の状態が続くと、歯ぐきがさらに腫れてくるだけでなく、歯ぐきの下にある歯を支えるための靭帯や骨が壊れていきます。 壊れた組織からは膿が出てきて、支えるものがなくなった歯はぐらぐらしてきます。
この状態を「歯周炎」と呼びます。
歯周炎は昔は「歯槽膿漏(しそうのうろう)」と呼ばれていました。 長い間、歯槽膿漏と呼ばれていたので、ドラッグストアの歯周病関連商品やテレビなどでは、まだ歯槽膿漏という言葉が使われている場合があります。
歯周炎にまで進行してしまうと、治療を行っても完全に元通りに戻すことはできません。 これ以上進行しないようにとめるという治療方針になります。
この「歯肉炎」と「歯周炎」を合わせて「歯周病」と呼ばれています。
歯周病は、いかに早い段階で治療を受けて、それ以上進行しないように管理していくかが重要です。 きっちりと管理されているかどうかが、自分の歯の寿命を大きく左右するポイントになるのです。
歯周病の原因菌
虫歯も歯周病も、細菌によって発症します。 その細菌は、歯の表面についた汚れ(歯垢、プラーク)の中にいます。
現在、歯周病の原因となる細菌(病原菌)として、
- Actinobacillus actinomycetemcomitans (通称:A.a.菌)
- Porphyromonas gingivalis (通称:P.g.菌)
…など、多くの種類の菌が明らかにされていますが、特に名前は覚える必要ありません。
一方で、虫歯の病原菌は、
- Streptococcus mutans (通称:ミュータンス菌)
- Lactobacillus (通称:ラクトバチルス菌)
…などが解明されています。
このように同じ口の中にある細菌でも、歯周病の病原菌と虫歯の病原菌は異なります。
つまり、歯周病と虫歯では原因が違うので、虫歯に全くなったことがないからといって、歯周病を発症しないというわけではないのです。
細菌感染なら薬で治せますか?
歯周病が細菌感染なら「お薬で治せるのでは!?」と思われる方もいると思います。
先ほどお話ししたように、歯周病は歯の表面についた汚れ(プラーク)、あるいはプラークが硬化したもの(歯石)の中にいる細菌が原因で起こります。
抗生物質(抗菌薬)や、うがい薬(洗口液)、あるいは薬効成分が入った歯磨き粉などを使用すると、一時的に細菌の増殖を抑えることができるものもあります。
ですが、それだけで治癒することはありません。
結局のところ原因のプラークや歯石を除去しない限りは、歯周病の進行は止まりません。 ウィルス感染が原因である風邪などとは違って、歯周病は薬や精神力(気合い)で治すことは不可能なので、迷わず歯科医院を受診しましょう。
自宅で歯周病治療ができるのかは次のページに詳しく書きました。
歯周病の症状はどんなものですか?
歯周病の症状は、どれだけ歯の周りの組織に病巣が進行しているかによって症状も変化します。
軽度の歯周病
歯と歯ぐきの間にプラークが付着し、歯石へと変化していきます。
次第に周りの歯ぐきが赤くぷくっと腫れ、歯磨きなどで出血しやすくなります。
中等度の歯周病
腫れた歯ぐきと歯の間に歯石がたまっていくにつれて、歯から歯ぐきがはがれていきます。 そして、その下にある靭帯も炎症を起こし、歯を支えている顎の骨が吸収され始めます。
健康な歯ぐきの色はピンク色ですが、歯周病の歯ぐきの色は赤色になっており、歯ぐきが腫れているため歯と歯の間に食べ物が詰まりやすくなってきます。 痛みはあまり感じず、歯ぐきの違和感を感じる程度ですが、この頃になると口臭が出てきます。
重度の歯周病
さらに炎症は周りの組織に波及し、顎の骨の吸収が進行するため、支えている歯がぐらぐらと動揺してきます。
歯が動揺してくると、強くかむことができなくなり、咬んだ時の痛みをともなうようになります。 歯並びも変わってくるため、歯が長くなったような、あるいは出っ歯になったような感じがしてきます。
また、破壊された組織から膿が出てくるようになると、歯ぐきはさらに腫れた状態になり、何もしなくても痛むようになってきます。
歯周病は自覚症状が少ないです。
中等度くらいまでは歯ぐきの違和感程度で痛みもなく、静かに歯周病が進行していきます。 歯がぐらぐらして腫れてきた頃に歯科受診しても、すでに歯周病がかなり進行していたということはよくみられます。
こうなってしまわないように、歯周病は定期的なメインテナンスにより予防管理をする必要があるのです。
歯周病って痛みはありますか?
痛みがある場合もない場合もあります。
歯周病が軽度や中等度である場合、歯ぐきの違和感程度で痛みはほぼ感じることはありません。
しかし、重度にまで進行してしまった場合には、「咬んだ時の痛み」、「何もしなくてもズキズキする痛み」、「顎や首、頭の痛み」、「首の下のリンパの痛み」と、どんどん症状は悪化してきます。
さらに、顔面の腫れや熱も出てきて、ひどい場合には命を脅かす危険性も報告されています。 歯科医院を受診して早急に対処し、定期的に管理することが重要です。
歯周病になると口臭はでますか?
口臭の一番の原因は、歯周病です。
口臭はいろんな原因がありますが、まずは歯周病の治療をすることから始めていいと思います。 プラークや歯石がたまってくると、その中の病原菌が増殖して、「生臭い」「ドブのような」臭いのある毒素を出してきます。 その場合、原因となるプラークや歯石を除去しない限り、口臭はひどくなるばかりです。
口臭は、他にもいろいろな原因があります。
虫歯や歯の破折などが原因で膿が出ている場合や、胃や腸など喉より奥の臓器に異常がある場合にも口臭が出ます。 原因が一つだけでなく複数の場合もあるため、一つずつ原因と思われるものを除去していくことで治癒につながります。
歯周病のチェックはどんなことをしますか?
歯周病は、歯と歯ぐきの間から始まり、歯ぐきが腫れて骨が溶けていくほど、その間のスペース(歯周ポケット)が大きくなってきます。
歯周病の診断は、次の2つを診査します。
- 歯周ポケットの深さ
- 支えている歯がどれくらい動揺しているか
①はプローブという器具で深さを測りますが、歯ぐきが炎症状態にある場合、少しチクチクするような痛みをともなうことがあります。
②は、実際に歯を動かしてみて診査するだけなので、痛みは全くありません。
歯周病は治る病気ですか?
昔は、「治らない。」と言われていた歯周病ですが、現在の歯科医療では治ります。
重度の歯周病の場合でも、完全に元の状態に戻すことは困難ですが、病気の進行を止めて健康な歯ぐきを取り戻すことが可能になりました。
実際の歯周病の治療というのは、大きく分けて2つのことを行います。
- 細菌の住み家であるプラークや歯石などを減少させること
- 歯周病のリスク因子を減らし、身体の防御機構を強化させること
そして治療に加えて、歯周病には「予防」が重要であり、定期的な「メインテナンス」を行うことで歯周病の細菌が歯の周りの組織に定着することを防いでくれることが分かってきました。
歯周病治療の流れ
歯周病の治療は、以下のような流れで行っていきます。
① 応急処置
まずは日常生活に支障が大きい、「痛み」、「腫れ」、「歯の動揺(ぐらぐら)」を抑えるように、処置を行います。
② 精密診査
応急処置により腫れがおさまったところで、現在の状態を詳しく診査し、どのように治療を進めていくかを決定します。
③ 説明・指導
「歯周病について」、「検査の内容」、「今後の治療計画」について説明を行い、「歯磨きの方法」、「歯周病のリスク因子の軽減」について指導を行います。
④ プラーク・歯石除去
歯ぐきより上にあるプラークや歯石、および歯ぐきの下にある歯石の除去を段階的に行います。
⑤ 再評価
各種検査により、治療の奏功について評価を行います。
⑥ 外科的歯周治療
必要である方にのみ、外科的な治療(手術)を行います。
⑦ メインテナンス
治療が終了すれば、定期的なメインテナンス(歯周病の診査、歯のクリーニング)に移行していきます。
詳しい治療内容については次のページでご案内しています。
歯周病は予防が大切です!
歯周病は、上でも書いたように治療だけで終了せず、また発症しないように予防していくことがとても重要になります。
歯周病の原因である細菌を定着させないようにする、つまりプラークや歯石がたまっていかないように定期的に管理していくこと(メインテナンス)が重要です。 メインテナンスは日頃の歯磨きの方法の改善や定期的な歯石除去に加えて、虫歯や咬み合わせのチェックやフッ素塗布などを行っていきます。
歯周病というのは慢性の病気であり、歯科医院でただ治療を受けるだけでは治りません。 自分でも「歯周病」という病気を知り、それを遠ざける努力を行うことで治療の成功や予防につながります。
例えば、血圧上昇や糖尿病を避けようと、少し食事に気を付けることをしますよね? 近視(目が悪く)にならないように、暗いところで作業をしたり近くでテレビを見たりしないようにしますよね?
まずは、歯周病がどのような病気なのかを知り、そのリスク因子を知ることが、予防の第1歩となります。
予防のための歯のクリーニングについては次のページでご案内しています。 当院では歯のクリーニングだけのご相談も歓迎していますので、お気軽にご相談ください。
歯周病が引き起こす全身疾患
近年、歯周病は多くの全身疾患に関与していることが分かってきました。
大きな手術の前には必ずプラークや歯石を除去することにより歯周病のコントロールを行うことが各病院でも徹底されています。
以下の疾患は、その中でも特に関連が深いとされている疾患です。
- 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
- 早産、低体重児出産
- 糖尿病
- 誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
- 関節リウマチ
- 慢性腎臓病
歯周病と全身疾患の関連性については次のページで詳しくご紹介しています。
最後に
歯周病について全体的な話をしました。
なるべく分かりやすくご説明したつもりですが、もし分からないところがあればお気軽にご相談ください。
ご相談・ご予約は次のリンクからお願いします。
今後とももんのうち歯科クリニックをよろしくお願いいたします。